大判例

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東京高等裁判所 昭和29年(う)2550号 判決

被告人 辛生教

〔抄 録〕

論旨第一点について。

被告人が原裁判所に提出した昭和二十九年七月二十二日附弁護届には、弁護士権逸及び同山岸文雄を弁護人に選任する旨及び弁護士権逸を主任弁護人に指定する旨の記載があること並びに右同日附原審第一回公判調書には出頭した弁護人の氏名として山岸文雄と記載し、その名下に主任弁護人に指定すると記入してあることは、本件記録に徴し明らかである。しかして主任弁護人に事故がある場合には、裁判長は他の弁護人のうち一人を副主任弁護人に指定することができることは刑事訴訟規則第二十三条第一項の定めるところであるから、右第一回公判調書の記載によつて明らかなとおり、右公判期日に出頭したのは弁護人山岸文雄のみで、主任弁護人たる権逸は出頭しなかつたので原審裁判官は前記規則に則り山岸文雄を副主任弁護人に指定したものであることが窺われる。しからば前記公判調書に主任弁護人に指定するとあるは副主任弁護人に指定する旨を誤つて記載したものと解する。しかして主任弁護人及び副主任弁護人制度は被告人に多数の弁護人がある場合に公判における弁護権の統一と訴訟手続の簡易化を図るのをその主たる目的としているものであつて、両者の権限には何等の差等があるものではなく(刑事訴訟規則第二十五条)、しかのみならず記録によれば当日出頭した被告人は勿論弁護人山岸文雄においても前記指定に対して何等の意見、異議を申し立てることなく訴訟行為をなしておること及び調書の正確性についての異議を申立てていないことが明らかであつて、かつその他被告人の利益保護乃至は弁護権の行使について欠くるところのものがあつたとも認められないから所論は採用に値しない。論旨は理由がない。

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